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初期臨床研修プログラムについて
- ■ 宇部協立病院における臨床研修の特徴
- ■ 理念・基本方針
- ■ 研修の一般目標
- ■ 臨床研修の進め方
- -必修科目
- -選択科目
- ■ 臨床研修病院年次報告
- ■ 2022年度初期臨床研修プログラム
プログラム名:宇部協立病院臨床研修プログラム
宇部協立病院における臨床研修の特徴
健文会は、159床の中規模病院である宇部協立病院をセンター病院として、
・病院(1)
・医科診療所(2)
・歯科診療所(3)
・訪問看護ステーション(3)
・ヘルパーステーション(1)
・グループホーム(1)
・デイサービス(3)
・在宅介護総合センター(1)
・居宅介護支援事業所(1)
で構成されており、その活動の拠点は宇部小野田地域を中心に下関地域を含む山口県西南部にあり、予防から診断、治療そしてリハビリ・介護までを一連のものとしてとらえ実践しながら、さらに医療制度をよくする運動にも取り組んでいます。
初期臨床研修は主たる宇部協立病院と後述する研修協力病院を中心に行われますが、職員一人一人の顔が見え、病院全体の動きが把握しやすいこの中規模病院の中で、民主的な集団医療を体験・実践しながら、その機動性を生かし研修医自らも院所の医療活動の創造・改善に参加していただきたいと思います。
一方で、全国組織(民医連および医療生協)に加盟しているという特徴を生かし、全国の仲間と交流しながら、自らの研修や医療制度の問題について語り合うことができます。そうした中で、これらのシステムや制度を固定したものとしてとらえ研修や医療を行うのではなく、自らも改革者としてこれらのシステムや制度の改善・改革の一翼を担って行けるように成長を期待し、援助します。
プライマリケア研修としての中規模病院での臨床研修の意義
プライマリケアの基本的能力習得のためには、臓器別に分断されていない診療環境の中で、臓器別ではなく重要度・頻度を重視した診断学と、救急疾患の初期治療、高頻度疾患の治療・管理といった臨床の基本を、主体的に学習・経験し、実践してゆくことが重要です。また、地方で地域医療を支える医師を育んでいくためには、キャリアを積んで特殊技能を身につけてそれを売り歩く医師を育てるのではなく、地域の中で往診などを通して“生活している”患者さんを実感しながら、ともに働く仲間とともに「地域で何が求められ、自分に何ができるか」を考えながら、自らの将来の医師像を描いてゆけることが大切だと考えています。
初期研修においてのこうした大切な経験や実践は、患者さんに対して、役割を分担・分化した大きな組織の一つの歯車として部分的・受動的に関わるのではなく、個人対個人として全体を通して継続的・主体的に関わってゆく中で、体験してゆくべきものだと考えます。
そのためにも、当院のような総合診療を行う中規模病院が初期の臨床研修にもっとも適していると自負しています。
理念・基本方針
宇部協立病院は臨床研修プログラムを通して,将来どのような医療分野に関わろうとも,主治医としてしっかり患者に寄り添い,医療の専門家としてその全ての健康問題の相談に乗り,その健康問題の解決に向けて調整できる医師の育成をめざします。加えて,個々の受け持ち患者のみならず,健康問題を抱えながらも来院すらできない人々がいることを深く認識し,こういった人々も含めた地域全体の健康に目を向け,これを改善・増進して,『安心して住み続けられるまちづくり』の実現をめざしてゆくコミュニティー・リーダーの育成もめざします。
1)担当医
主治医である指導医の指導のもとで,患者の担当医として患者の診断治療,健康管理にかかわります。患者に対する責任の自覚と診療への積極性を養うため,研修の進行状況に合わせ,主治医機能を徐々に担当医に委譲していきます。
2)基本的臨床能力
プライマリ・ケアの基本的臨床能力として,①臓器別ではない症候を中心とした診断能力,②救急疾患の診断と初療の能力,③高頻度疾患の診断と治療,の研修を重視します。
3)継続性
将来,主治医として,患者の抱えるすべての健康問題に対し関心を持ち,継続してその健康管理を行えるように,診療は極力継続性を重視する。そのため,受け持った患者は,外来から病棟,内科から外科,そしてまた外来,さらには在宅医療と,たとえ医療現場が変化していっても,なるべく継続して担当医として患者に寄り添いその診療に当たります。
4)院外活動、他職種との交流
地域の健康問題に関心を持ってもらうため,在宅診療や医療生協の班会,さらには多職種カンファレンスやケースワーカーの症例検討会など,院外活動や他職種との交流を積極的に行っていきます。
臨床研修の一般到達目標
Ⅰ. 医師としての基本的価値観(プロフェッショナリズム)を身につける
1. 社会的使命と公衆衛生の寄与
社会的使命を自覚し、説明責任を果たしつつ、限りある資源や社会の変遷に配慮した公正な医療の提供及び公衆衛生の向上に努める。
2. 利他的な態度
患者の苦痛や不安の軽減と福利の向上を最優先し、患者の価値観や自己決定権を尊重する。
3. 人間性の尊重
患者や家族の多様な価値観、感情、知識に配慮し、尊敬の念と思いやりの心を持って接する。
4. 自らを高める姿勢
自らの言動及び医療の内容を省察し、常に資質・能力の向上に努める。
Ⅱ.基本的診療業務ができるレベルの資質・能力を習得する
1. 医学・医療における倫理性 … 診療、研究、教育に関する倫理的な問題を認識し、適切に行動する。
①人間の尊厳を守り、生命の不可侵性を尊重する。
②患者のプライバシーに配慮し、守秘義務を果たす。
③倫理性ジレンマを認識し、相互尊重に基づき対応する。
④利益相反を認識し、管理方針に準拠して対応する。
⑤診療、研究、教育の透明性を確保し、不正行為の防止に努める。
2. 医学知識と問題対応能力 … 最新の医学及び医療に関する知識を獲得し、自らが直面する診療上の問題について、科学的根拠に経験を加味して解決を図る。
①頻度の高い症候について、適切な臨床推論のプロセスを経て、鑑別診断と初期対応を行う。
②患者情報を収集し、最新の医学的知見に基づいて、患者の意向や生活の質に配慮した臨床決断を行う。
③保健・医療・福祉の各側面に配慮した診療計画を立案し、実行する。
3. 診療技能と患者ケア … 臨床技能を磨き、患者の苦痛や不安、考え・意向に配慮した診療を行う。
①患者の健康状態に関する情報を、心理・社会的側面を含めて、効果的かつ安全に収集する。
②患者の状態に合わせた、最適な治療を安全に実施する。
③診療内容とその根拠に関する医療記録や文書を、適切かつ遅滞なく作成する。
4.コミュニケーション能力 … 患者の心理・社会的背景を踏まえて、患者の家族と良好な関係性と築く。
①適切な言葉遣い、礼儀正しい態度、身だしなみで患者や家族に接する。
②患者や家族にとって必要な情報を整理し、分かりやすい言葉で説明して、患者の主体的な意思決定を支援する。
③患者や家族のニーズを身体・心理・社会的側面から把握する。
5.チーム医療の実践 … 医療従事者をはじめ、患者や家族に関わる全ての人々の役割を理解し、連携を図る。
①医療を提供する組織やチームの目的、チームの各構成員の役割を理解する。
②チームの各構成員と情報を共有し、連携を図る。
6.医療の質と安全の管理 … 患者にとって良質かつ安全な医療を提供し、医療従事者の安全性にも配慮する。
①医療の質と患者安全の重要性を理解し、それらの評価・改善に努める。
②日常業務の一環として、報告・連絡・相談を実践する。
③医療事故等の予防と事後の対応を行う。
④医療従事者の健康管理(予防接種や針刺し事故への対応を含む。)を理解し、自らの健康管理に努める。
7.社会における医療の実践 … 医療の持つ社会的側面に重要性を踏まえ、各種医療制度・システムを理解し、地域社会と国際社会に貢献する。
①保健医療に関する法規・制度の目的と仕組みを理解する。
②医療費の患者負担に配慮しつつ、健康保険、公費負担医療を適切に活用する。
③地域の健康問題やニーズを把握し、必要な対策を提案する。
④予防医療・保健・健康増進に努める。
⑤地域包括ケアシステムを理解し、その推進に貢献する。
⑥災害や感染症パンデミックなどの非日常的な医療需要に備える。
8.科学的探究 … 医学及び医療における科学的アプローチを理解し、学術活動を通じて、医学及び医療の発展に寄与する。
①医療上の疑問点を研究課題に変換する。
②科学的研究方法を理解し、活用する。
③臨床研究や治験の意義を理解し、協力する。
9.生涯にわたって共に学ぶ姿勢 … 医療の質の向上のために省察し、他の医師・医療者と共に研鑽しながら、後進の育成にも携わり、生涯にわたって自律的に学び続ける。
①急速に変化・発展する医学知識・技術の吸収に努める。
②同僚、後輩、医師以外の医療職と互いに教え、学びあう。
③国内外の政策や医学及び医療の最新動向(薬剤耐性菌やゲノム医療等を含む。)を把握する。
Ⅲ. 基本的な診療を単独で行えるようになる
コンサルテーションや医療連携が可能な状況下で、以下の各領域において、単独で診療ができる。1. 一般外来診療
頻度の高い症候・病態について、適切な臨床推論プロセスを経て診断・治療を行い、主な慢性疾患については継続診療ができる。
2. 病棟診療
急性期の患者を含む入院患者について、入院診療計画を作成し、患者の一般的・全身的な診療とケアを行い、地域連携に配慮した退院調整ができる。
3. 初期救急対応
緊急性の高い病態を有する患者の状態や緊急度を速やかに把握・診断し、必要時には応急処置や院内外の専門部門と連携ができる。
4. 地域医療
地域医療の特性及び地域包括ケアの概念と枠組みを理解し、医療・介護・保健・福祉に関わる種々の施設や組織と連携できる。
臨床研修の進め方
【必修科目】
研修病院:宇部協立病院、鳥取生協病院
<病棟研修>
基本的疾患・高頻度疾患を中心に病棟の入院患者を主治医として担当し始め,最終的には5~10人の患者を担当する。担当患者については、定期的に指導医と回診を行い、ディスカッションする。また、週一回の内科回診および研修医の受持ち患者カンファレンスにおいては、患者のプレゼンテーションを行い、集団的チェックを受ける。また、他職種とのカンファレンス(看護師,薬剤師との病棟カンファレンス、リハビリカンファレンス、退院カンファレンスなど)も持ち、治療方針や退院支援などについて討議を行って集団的医療の中での民主的な運営を学ぶ。また下記事項の講習会への参加および経験を行う。内科研修中での参加、経験が困難な場合は他の研修期間中で補完できるよう調整する。
社会復帰支援:長期入院が必要であった患者が退院する際、MSW等とともに、社会復帰支援計画を患者とともに作成し、外来(一般外来研修)でフォローアップを行う。
緩和ケア:厚生労働省が定める「がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会の開催指針」に準拠した内容の緩和ケア研修会に参加した上で、緩和ケアを必要とする患者を担当する。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP・人生会議):ACP について体系的に学ぶことができる講習会などを受講した上で、医療・ケアチームの一員としてACPを踏まえた意思決定支援の場に参加する。
虐待:主に児童虐待において、医療機関に求められる早期発見につながる所見や徴候、及びその後の児童相談所との連携等について学ぶ。方法としては虐待に関する研修を受講する。あるいは同様の研修等を受講した小児科医による伝達講習や被虐待児の対応に取り組んだ経験の多い小児科医からの講義を受ける。
臨床研究・治験:医学及び医療における科学的アプローチを理解し、学術活動を通じて、医学及び医療の発展に寄与する意義を学ぶため、臨床研究・治験の基本的知識について講義を受ける。
臨床病理検討会(CPC):剖検症例の臨床経過を詳細に検討して問題点を整理し、剖検結果に照らし合わせて総括することにより、疾病・病態について理解を深める。方法としては死亡患者の家族への剖検の説明に同席し、剖検に立ち会う。CPCにおいては、症例レポート作成は不要とするが、症例提示を行い、フィードバックを受け、考察を含む最終的なまとめまで行う。
<一般外来研修>
一般外来研修を指導医の監督下で行う。限られた外来診療の中で症候学・診断学を駆使して、適切な臨床推論プロセスを経て診断し、方針を立てる訓練を行う。具体的には内科研修2ヶ月目頃から健診や入院受け持ち患者の退院後フォローアップ、頻度の高い慢性疾患患者の継続診療研修を週1単位程度の頻度で開始する。健診では診察と健康指導を行い、予防接種を行う際には、接種の可否の判断や計画の作成に加わる。その後、初診患者の外来研修を週1~2単位程度の頻度で行う。
<基本的手技に関する研修>
基本的手技(①気道確保、②人工呼吸(バッグ・バルブ・マスクによる徒手換気を含む。)、③胸骨圧迫、④圧迫止血法、⑤包帯法、⑥採血法(静脈血、動脈血)、⑦注射法(皮内、皮下、筋肉、点滴、静脈確保、中心静脈確保)、⑧腰椎穿刺、⑨穿刺法(胸腔、腹腔)、⑩導尿法、⑪ドレーン・チューブ類の管理、⑫胃管の挿入と管理、⑬局所麻酔法、⑭創部消毒とガーゼ交換、⑮簡単な切開・排膿、⑯皮膚縫合、⑰軽度の外傷・熱傷の処置、⑱気管挿管、⑲除細動)については機会あるごとに見学・実践してゆく。研修進行状況チェック表による症例数の記録ならびに自己評価、指導医評価を基に研修委員会等で進捗状況を確認し、習得できるよう努める。
<基本的臨床検査に関する研修>
基本的臨床検査(一般尿検査 、便検査、血算・白血球分画、血液型判定・交差適合試験、)心電図(12誘導)、負荷心電図、動脈血ガス分析、血液生化学的検査、簡易検査(血糖、電解質、尿素窒素など)、血液免疫血清学的検査、細菌学的検査・薬剤感受性検査・検体の採取、簡単な細菌学的検査(グラム染色など)、呼吸機能検査・スパイロメトリー、 髄液検査、 細胞診・病理組織検査、 内視鏡検査、 超音波検査、 単純X線検査、 造影X線検査、X線CT検査、 MRI検査、核医学検査、神経生理学的検査(脳波・筋電図など))の適応判断、結果の解釈については症例を経験する中で習得してゆく。指導医は観察に基づく評価を行ない、所定の評価用紙を用いて研修医にフィードバックする。また適宜、研修委員会等で進捗状況を確認し、習得できるよう努める。
<臨床検査技術に関する研修>
以下の臨床検査技術を自ら実施できるよう、臨床検査部門指導者の下で研修を行う。
➀輸血に必要な血液型検査、照射赤血球濃厚液の交差適合試験(クロスマッチ)
②心電図
③動脈血ガス分析
④腹部超音波検査
⑤心臓超音波検査
⑥細菌学的検査(検体の採取・簡単な細菌学的検査・グラム染色)
➆院内至急検体検査(生化学、血液学、血清学、尿一般、その他)
超音波検査については腹部超音波検査から行い、3ヶ月ごとをめどに順次、心臓超音波検査を修得する。研修医の希望に応じて、単純X線撮影検査・消化管造影検査、消化管内視鏡検査などの検査を経験・習得してゆく。指導者は観察に基づく評価を行ない、所定の評価用紙を用いて研修医にフィードバックする。適宜、研修委員会等で進捗状況を確認し、研修修了できるよう努める。
<読影研修>
胸部X線写真の読影研修を週1回、CTの読影研修を週1回程度行う。研修医はこれに参加し、読影能力を身につけるよう指導を受ける。読影研修の到達目標は、研修医の進路や希望に応じて柔軟に決定される。
<委員会活動>
5月の内科研修期間より全研修期間を通して感染対策チームやリスクマネージャー会議、緩和ケアチーム、栄養サポートチーム等の診療領域・職種横断的なチーム活動に参加し、感染対策(院内感染や性感染症等)や医療安全について学びを深めるとともに、チームとしての連携を深める。
≪救急研修≫ … 12週以上
救急研修は4週間のブロック研修と8週間の並行研修から構成される。最初の4週間のブロック研修では最初のステップとしてスムーズな救急研修実践の足掛かりのために、職員教育(院所の医療理念教育とプライマリヘルスケアなどの概念の普及)、他職種研修を行う。他職種研修ではプロフェッショナリズムの理解・修得を目標とし、現場の指導者より社会人としての姿勢や患者様への配慮、患者の取り巻く環境を把握し、多角的な視点で診る姿勢を養う。また医療生協という特徴を活かした保健予防活動に参加をすることで医療・介護を必要とする地域住民の声を直接聞き、「地域に何が求められ、自分に何ができるか」医師としての社会的使命を考える機会とする。その後のステップとして、基本的業務(カルテ記載や、処方や検査指示の出し方、薬剤の使い方など)、医療面接と病歴のとり方、身体診察法の基本を学ぶ。並行して注射法・採血法(動脈血・静脈血)等の基本的手技を集中して学習・実践し、確実なものとする。臨床講義ではより救急の実践に即した内容を学習する。8週間の並行研修では日中・夜間の救急患者搬入の際や、病棟患者急変の際に、積極的に出向いて治療に参加する。進捗状況を、救急研修評価票、mini-CEX等で評価し、その結果に基づき研修委員会の場で、対応可能な範囲を、救急研修ステップを基に設定し、徐々に一人立ちを目指す。
<臨床講義>
救急薬剤、救急機器の説明・取り扱い方の講義、さらには救急疾患の臨床講義を受ける。あわせて心電図などの機器については実習も行う。当直に向けての臨床講義をそれぞれの担当医やコメディカルより行う。また、当直で用いる薬剤について、症候別の具体的なその用い方、その副作用などを学ぶ。
<副直研修>
1年目の5月より副直として当直業務に参加する。副直は、月に3~4回を目途に始める。主に見学を行いながら指導を受け、その後、初期対応~指導医の監督下で診療を行う。研修委員会の場で研修進捗状況を確認し、救急研修ステップに基づいた範囲で研修を行いつつ、最終的には指導医の後方待機のもとに、一人で診察を行うことを目指す。
<日中の救急研修>
1年目の5月より日中の救急車対応を内科研修と並行して開始する。研修は基本的に副直研修と同様の方式で行う。
<講習会>
救急研修期間中にICLS講習会に参加をする。また、研修期間中にコメディカル対象にBLS講習会を開催できるよう努める。
≪外科研修≫ … 4週以上
研修病院:綜合病院山口赤十字病院、山口大学医学部附属病院、宇部興産中央病院、健和会大手町病院 手術症例患者を受け持ち、術前術後の管理に参画します。この間に、癌を中心とした外科的疾患の診断と治療を学びます。また、創部消毒とガーゼ交換、ドレーン・チューブ類の管理、局所麻酔法、切開・排膿法、皮膚縫合法、外傷・熱傷の処置などを学び実践する。
研修病院:綜合病院山口赤十字病院、山口大学医学部附属病院 小児科及び小児科医の役割を理解し、小児医療を適切に行うために必要な基礎知識・技能・態度を修得する。
1.小児の特性を学ぶ
①.小児の特性を知り、病児の不安・不満のあり方をともに感じ、病児の心理状態を考慮した治療計画を立てる。
②.成長、発達の過程にある小児の診療のために、一般診療に加えて正常新生児の診察や幼児検診を経験する。
③.正常児について、出生から新生児の生理的変動を観察し記録する。
④.夜間小児救急を訪れる病児の疾患の特性を知り、対処方法及び保護者(母親)の心理状態を理解することの重要性を学ぶ。
⑤.外来実習により、子供の病気に対する母親の心配のあり方を受け止める対応方法を学び、育児及び育児不安・育児不満についての対応法、育児支援の実際を学ぶ。
2.小児の診療の特性を学ぶ
①.小児科の対象年齢は新生児期から思春期と幅広い。小児の診療の方法は年齢によって大きく異なり、特に乳幼児では症状を的確に訴えることができない。しかし、養育者(母親)は子供が小さければ小さいほど長時間子供と共に生活しており、母親の観察は極めて的確である。そこで医療面接において、母親の観察や訴えの詳細に充分に耳を傾け、問題の本質を探し出すことが重要になる。
②.母親との医療面接においては、まず信頼関係を構築し、その上に立ったコミュニケーションが重要である。また診察においては、子供の発達の具合に応じて変える必要があり、特に診療行為についての理解に乏しい乳幼児の協力を得るために、子供をあやすなどの行為が必要となる。理学的所見の取り方については、乳幼児で最も嫌がる口腔内診察を最後に回すなどの年齢に応じた配慮が重要である。このように、小児科診療では他科と同様あるいはそれ以上の人間性と思いやりのある暖かい心が必要である。
③.乳幼児は、検査値や画像検査に先行して、診察者の観察と判断がなによりも重要であることから、病児の観察から病態を推察する「初期印象診断」の経験を蓄積する。
④.成長段階により小児薬容量、補液量は大きく変動する。このため小児薬容量の考え方、補液量の計算方法について学ぶ。また、小児期に頻用される検査の正常値も範囲も成人とは異なることから、小児薬容量、補液量、検査に関する知識の習得、乳幼児の検査に不可欠な鎮静法、診察の基本でもある採血や血管確保などを経験する。
⑤.予防医学的研修として、予防接種、マススクリーニングについて経験する。
3.小児期の疾患の特性を学ぶ
①.小児疾患の特性のひとつは、発達段階によって疾患内容が異なることである。従って、同じ症候でも鑑別する疾患が年齢により異なることを学ぶ。
②.小児疾患は、成人と病名は同じでも病態は異なることが多く、小児特有の病態を理解し、病態に応じた治療計画を立てることを学ぶ。
③.成人にはない小児特有の疾患、染色体異常、種々の先天性異常症(代謝異常症、免疫不全症など)、各発達段階に特有の疾患などを学ぶ。
④.小児期には感染症の中でも特にウイルス感染症の頻度が高い。熱型や発疹の特徴から病原体の推定を行い、その病原体の同定方法、同定の手順、管理の方法、治療法について学ぶ。
⑤.細菌感染症も感染病巣(臓器)と病原体との関係に年齢的特徴があることを学ぶ。
≪産婦人科研修≫ … 4週以上
研修病院:総合病院山口赤十字病院、山口大学医学部附属病院、健和会大手町病院 産婦人科の基礎的な知識、技能、患者に対する態度などを修得する。
基本項目(卒後2 年間の研修目標)
1. 基本的診察法
1)婦人科的診察ができ、記載できる。
2)全身の系統的な診察を行い、主要な所見を正しく把握できる。
2. 基本的検査法
1)適切に検査を選択・指示し、結果を解釈できる。
2)適切に検査を選択・指示し、専門家の意見に基づき結果を解釈できる。
3. 基本的治療法
1)適応を決定し、実施できる。
2)医薬品の副作用を理解し、副作用に適切に対応できる
3)必要性を判断し、適応を決定できる。
4. 基本的手技
適応を決定し、実施できる。
5. 緊急患者のプライマリケア
1)バイタルサインを正しく把握し、生命維持に必要な処置を的確に行える。
2)問診、全身の診察、検査等によって得られた情報をもとにして迅速に判断を下し、初期診療計画を立て、実施できる。
3)患者の診療を指導医または専門医の手に委ねるべき状況を的確に判断し、申し送りないし移送できる。
4)患者の移送に必要な処置を行い、移送中の注意を指示できる。
6. 末期医療
1)人間的、心理的立場に立った治療(除痛対策を含む)ができる。
2)精神的ケアができる。
3)家族への配慮ができる。
4)死への対応ができる。
7. 患者・家族との閑係
1)適切なコミュニケーションのもとに信頼関係を確立できる。
2)患者・家族のニーズの把握ができる。
3)生活指導(栄養と運動、環境、在宅療養等を含む)ができる。
4)心理的側面の把握と指導ができる。
5)診療の内容についてインフォームド・コンセントを得るよう努める。
6)プライバシーの保護について理解し、実行できる。
8. 医療の社会的側面
1)健康保険制度を理解し、その範囲内で適切な医療を実施できる。
2)各種の医療補助制度を理解し、適切なアドバイスができる。
3)主な医療法規を理解し、遵守する。
4)在宅医療、社会復帰について理解し、対応できる。
5)疾病の診療のみならず、疾病の予防、健康の維持・増進に対応できる。
6)医の倫理・生命の倫理を理解し、適切に対応できる。
7)医療事故について理解している。
8)麻薬の取扱いを理解し、対応できる。
9. 医療メンバー
1)チーム医療における他の医師および医療メンバーと協調的に活動できる。
2)チーム医療を率先して組織し、実践できる。
10. 文書記録
診療録等の医療記録、処方箋、指示書、診断書、検案書、その他の証明書、紹介状とその返書などを適切に作成し、管理できる。
11. 診療計画・評価
研修病院:宇部協立病院、長門一ノ宮病院、林道倫精神科神経科病院
精神疾患患者に対する偏見を持つことなく、精神保健・医療を必要とする患者とその家族に対して全人的にとらえる姿勢を身につけます。
1. 精神科面接技術 ・態度の習得
1)プライバシーに配慮しつつ、患者 およびその家族に対して 共感的な態度で面接を施行できる。
2)患者の病歴(主訴、現病歴、既往歴、家族歴、生活・職業歴、系統的インタビュー)聴取を行うことができる。
3)陳述と表情・態度・行動等の情報から精神症状を適切な 捉え ることができる。
4)症状や状態像について適切な 専門用語 を使用したSOAP形式のカルテ記載ができる。
2. 精神科 薬物療法の習得
1)向精神薬( 抗不安薬・睡眠薬、抗うつ薬、抗精神病薬 の機序・作用・副作用・特徴を説明できる。
2)患者の精神・疾患に応じた適切な処方をすることができる。
3)向精神薬による副作用の把握・予防・対処方法を説明できる。
3. 精神療法の習得
1)患者の話をよく聴き、支持的な態度で患者に接することができる。
2)医療面接を基に家族関係の特徴を把握することができる。
3)家族のニーズを心理、社会倫理的側面から把握し、家族と信頼・協力関係を構築することができる。
4. 精神科救急対応の習得
1)精神運動興奮状態の患者に対して 適切に対応することができる。
2)自殺の危険性が高い患者を適切に評価し、対応することができる。
5. リエゾン・コンサルテーション場面での診療に必要な知識・技術の習得
1)身体科主治医からの依頼に対して診断と初期対応(適切なアドバイスを含む)を行うことができる。
2)カンファレンスの場で看護師、 臨床心理士 、薬剤師、リハビリ、SWなどのコメディカルに対して適切なアドバイスを行うことができる。
研修病院:宇部協立病院
臨床研修協力施設:生協小野田診療所、わたぬきクリニック <一般外来研修>
病院とは異なる診療所という環境において頻度の高い慢性疾患患者の継続診療および初診一般外来診療を行います。限られた医療震源の中で、詳細な病歴聴取と身体診察から鑑別診断を考えてゆく習慣を身につける。
<在宅往診研修>
在宅往診を体験する。在宅往診医療を通して、地域内での訪問看護やヘルパーステーションなどとの連携を含む地域包括ケアの実際について学び。ここで学んだ在宅往診医療は、後で行なわれる総合診療研修で実践・経験され、病棟から在宅への連携を経験する。
<予防医療>
予防医療の理念を理解し、地域や臨床の場で実践するために各種活動に参画する。
1)食事・運動・休養・飲酒・禁煙指導とストレスマネージメントができる。
2)性感染症(エイズを含む)予防,家族計画指導に参画できる。
3)地域・職場・学校などの健診・保健事業に参画できる。
4)予防接種のリスクとベネフィットについて理解し、実際に実施できる。
研修病院:宇部協立病院
臨床研修協力施設:生協小野田診療所
内科、地域医療、総合診療科研修期間を通し、並行して一般外来研修を行う。初診患者の症候・病態について適切な臨床推論プロセスを経て解決に導く訓練や、慢性疾患患者の継続的な診療研修を各診療科の研修時期や特性に応じた形で行う。
半日を1単位として最低40単位(4週程度)から最大80単位(8週程度)の研修を行う。
<内科研修>
内科研修5週目頃から健診や入院受け持ち患者の退院後フォローアップ、頻度の高い慢性疾患患者の継続診療研修を週1単位程度の頻度で開始し、その後、初診患者の外来研修を週1~2単位程度の頻度で行う。
【選択科目】
研修病院:綜合病院山口赤十字病院、宇部興産中央病院、健和会大手町病院 麻酔における全身管理の基礎知識・技術修得を目指します。麻酔の管理全般を研修しながら、血管確保から挿管を含む気道確保、人工呼吸などの基本手技、昇圧剤などの救急薬の使い方を学ぶ。
研修病院:宇部協立病院 外傷や運動器系疾患の診断と治療を経験し学び、病棟及び外来での小外科や外科救急などを中心にプライマリケア医に求められる外科技術を確立します。加えて外来での術後患者の外来フォローのあり方などを学び、経験・実践する。
研修病院:山口大学医学部附属病院 臨床医としてプライマリケアに必要とされる眼科の基本的知識を身につける。
研修病院:山口大学医学部附属病院 プライマリケアにおいて一般医が身につけておくべき皮膚科の基本知識、技能を習得する。
研修病院:山口大学医学部附属病院
臨床医としてプライマリケアに必要とされる耳鼻咽喉科の基本的知識を身につける。
研修病院:山口大学医学部附属病院
プライマリケアにおいて一般医が身につけておくべき基本的な神経内科的診察・思考方式を身につける。
研修病院:山口大学医学部附属病院 プライマリケアにおいて一般医が身につけておくべき内科内分泌内科の基本知識、技能を習得する。
研修病院:宇部協立病院、宇部興産中央病院、健和会大手町病院
臨床研修協力施設:生協小野田診療所 これまで学んできた知識や経験を最大限生かしながら、医療の現場で予防から外来急性期、入院、さらには再び外来フォローまたは在宅往診、さらには終末期医療まで、一貫して主治医として担当して個々の患者を診療します。
初診一般外来を指導医の監督下で継続して行います。この外来研修を通して、診断学の基礎を集大成してゆきます。
臨床研修協力施設:山口県庁、山口県萩健康福祉センター 医療従事者と行政職員とで求められる仕事内容や培われた思考プロセスの差を理解するとともに、両者の立場や認識のギャップを理解します。
<山口県庁>(1週以上)
山口県庁のインターンとして1週間程度、臨床現場に直結する感染症等の公衆衛生や健康づくり(未病)のための医療政策、医療従事者確保等の医療政策などの保健医療行政を学びます。
加えて、この期間において市の健康増進課や包括支援センターへ各2日間程度出向し、県庁、市、包括支援センターのそれぞれの視点の医療行政のあり方を比較します。
<山口萩健康福祉センター>(1週以上)
県の保健・医療行政に関する概要について講義を受け、保健所の役割とその業務の実際を学びます。
その後公衆衛生医師等の実務者のもと、一定期間、感染症対策や精神保健行政、難病対策等の保健所業務について実務研修を行います。
臨床研修病院年次報告
医師法第16条の2第1項に規定する臨床研修に関する省令(平成14年厚生労働省令第158号)第12条に基づき、以下の通り報告します。
■ 様式10 臨床研修病院年次報告書